「私の残業時間って、世間と比べて多い?少ない?」
そう考えたことがある女性は、少なくないと思います。特に仕事とプライベートのバランスを大切にしたいと考える方にとって、残業時間は働き方を考える上で非常に重要な要素ですよね。
今回は、国内の大手転職サービスである「リクルートエージェント」と「doda」がそれぞれ実施した、ビジネスパーソンの残業時間に関する調査データをもとに、特に女性の平均残業時間にスポットを当てて、その実態と調査結果の「なぜ?」を見ていきましょう。
女性の平均残業時間(月)
早速ですが、2つの調査で示された女性の平均残業時間を見てみましょう。男性のデータも比較のために併記してます。
【リクルートエージェント調査】
20代から50代の正社員で働くビジネスパーソン18,022人への調査
月の残業 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
男性 | 14.4時間 | 16.2時間 | 16.4時間 | 15.1時間 |
女性 | 9.8時間 | 8.7時間 | 8.7時間 | 8.4時間 |
【doda調査】
ビジネスパーソン15,000人への調査
月の残業 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
男性 | 20.3時間 | 23.7時間 | 26.3時間 | 23.8時間 |
女性 | 15.6時間 | 13.7時間 | 15.5時間 | 14.3時間 |
2つのデータを見ると、「あれ?けっこう数字が違う?」と感じるかもしれません。
リクルートエージェントの調査では女性の残業時間は10時間を切る年代がほとんどなのに対し、dodaの調査では15時間前後となっています。
どちらの調査も数万人規模で、統計学的には十分なサンプル数があります。この数字の違いは、主に調査対象となったビジネスパーソンの層が少し異なっているためと考えられます。
どちらの数字も、世の中の残業時間の実態を表す参考情報として捉えるのが良いでしょう。
女性の傾向と、男性との違い
この2つのデータを踏まえ、
女性の残業時間についてどんな傾向が見えるでしょうか。
少しわかりやすくグラフで改めて見てみます。


この両調査に共通して顕著なのは、
女性の平均残業時間は男性に比べて大幅に短いという点。
例えば、dodaの調査を見ると、20代男性が20.3時間なのに対し、女性は15.6時間。40代男性は26.3時間に対し、女性は15.5時間と、女性の残業時間は男性の半分程度、あるいはそれ以下にとどまっていることが分かります。
また、年代が上がるにつれて男性の残業時間が(dodaでは特に)増加傾向にあるのに対し、女性は20代から50代にかけても大きな変動がなく、むしろ微減している年代も見られます(リクルートエージェントのデータでは顕著ですね)。
この「女性の方が男性よりも残業時間が短い傾向」は、一般的に言われる「女性は育児や介護、家事といったプライベートとの両立を重視する傾向が強い」という実態を反映している可能性も考えられます。
企業側も、女性社員のライフイベントへの配慮から、残業時間を抑制するような働きかけをしているケースもあるかもしれません。
もちろん、この「残業時間が短い」という点が、必ずしもポジティブな側面ばかりではなく、ワークライフバランスが取りやすいというメリットがある一方で、キャリア形成や昇進・昇格、賃金などに影響を与える可能性もあると思います。
残業時間が多い職種、少ない職種
続いては、職種別の残業時間も見てみましょう。
こちらは男女まとめたデータになりますが、傾向は分かると思います。
まずは、残業時間が多い職種から
残業時間が「多い職種」から分かる傾向
【リクルートエージェント調査:残業時間が多い職種 TOP10】
順位 | 職種 | 月間残業時間 |
1 | ビジネス系コンサルタント | 21.2時間 |
2 | ドライバー | 21.0時間 |
3 | 組込み・制御エンジニア | 20.2時間 |
3 | 施工管理・設備・環境保全 | 20.2時間 |
5 | 編集・ライター・制作管理 | 20.1時間 |
6 | ITアーキテクト | 19.7時間 |
7 | 機械エンジニア | 19.4時間 |
8 | 商品企画・営業企画 | 18.3時間 |
9 | 電気エンジニア | 18.2時間 |
10 | 化学エンジニア | 17.9時間 |
【doda調査:残業時間が多い職種 TOP10】
順位 | 職種 | 月間残業時間 |
1 | インフラコンサルタント | 39.4時間 |
2 | 設計監理/コンストラクションマネジメント | 31.6時間 |
3 | プロデューサー/ディレクター/プランナー | 31.3時間 |
3 | 専門商社の営業 | 31.2時間 |
5 | 店長 | 30.6時間 |
6 | 施工管理 | 30.5時間 |
7 | 広告営業 | 29.9時間 |
8 | 総合商社の営業 | 29.3時間 |
9 | 運輸/物流サービス | 29.0時間 |
10 | 研究開発/R&D(IT/通信) | 28.6時間 |
ランクインしている職種を見ていると、「やっぱりね」と思うものもあれば、「へぇ、そうなんだ」と意外に感じるものもあったかもしれません。
まず気が付くのは、リクルートエージェントでは1位が月21.2時間なのに、dodaでは1位が月39.4時間と、かなり数字が違うこと。
これは上の方でも見た男女の残業時間でも同じですが、どちらのデータが間違っているという話ではなく、単純に、調査に回答してくれた人たちの顔ぶれが少し違っている、ということになるでしょう。
ということから、「こうした傾向もあるんだな」という見方をしてみてください。
では改めてよく見ると、
異なる調査なのに共通して上位に顔を出している職種があります。
たとえば「コンサルタント」「施工管理」「エンジニア(IT・開発系も含む)」「営業(特に企画や専門性が求められるもの)」といったもの。
これらの職種は残業時間が長くなりがちと言えると思いますが、その理由は以下のようなことが考えられそうです。
- 専門性が高くて、成果へのプレッシャーも大きい:
コンサルタントやエンジニアなんかは、特定の知識やスキルを使って問題を解決するのが仕事。締め切りや目標達成のために、どうしても時間をかける必要がある場面が出てきやすそう。 - お客様やプロジェクトの状況に左右される:
営業職や施工管理の仕事は、自分のペースだけで進められないことも多く、お客様の都合や予期せぬトラブル対応で、時間外の対応が必要になることも多くなりそう。 - 企画や制作って、終わりが見えにくい?:
プロデューサーやディレクター、編集者といったクリエイティブ系の仕事は、「これで完成!」という線引きが難しいこともあり、より良いものを作るために、ついつい時間をかけてしまう、ということも多そうです。 - 「裁量労働制」も関係しているかも:
職種によっては、時間ではなく成果で評価される「裁量労働制」が適用されているケースもあります。この場合、定められた時間働けば良い、というよりは、タスクを終わらせるために柔軟に働くことが求められ、結果的に長時間になることもありますね。
もしあなたの職種がこれらの傾向に当てはまるなら、「ああ、だからなんだな」と納得する部分もあるかもしれません。
残業時間が「少ない職種」から分かる傾向
では続いて「比較的早く家に帰れそう」といった、
残業時間が少ない職種を見てみましょう。
【リクルートエージェント調査:残業時間が少ない職種 TOP10】
順位 | 職種 | 月間残業時間 |
1 | 化粧品販売・美容部員 | 5.4時間 |
2 | 保健師・介護士 | 7.5時間 |
3 | 受付 | 7.7時間 |
4 | 営業事務・一般事務 | 7.8時間 |
4 | その他(臨床心理士・カウンセラー) | 7.8時間 |
6 | アパレル・ファッション販売 | 8.2時間 |
7 | 経理事務・人事事務・総務事務・法務 | 8.6時間 |
7 | その他(事務・受付・秘書) | 8.6時間 |
9 | 医療事務 | 8.9時間 |
10 | 農林・水産・酪農 | 9.0時間 |
【doda調査:残業時間が少ない職種 TOP10】
順位 | 職種 | 月間残業時間 |
1 | 医療事務 | 10.3時間 |
2 | 貿易事務 | 11.1時間 |
3 | 臨床開発関連 | 11.7時間 |
4 | 秘書/受付 | 12.6時間 |
4 | 経理事務/財務事務 | 13.0時間 |
6 | 薬事 | 13.0時間 |
7 | 営業事務 | 13.6時間 |
7 | 生産管理/製造(医療系) | 13.8時間 |
9 | 総務事務/法務事務/知財事務/広報事務 | 14.2時間 |
10 | テレマーケティング/カスタマーサポート/コールセンター | 14.9時間 |
データを見てみると、「事務系」の職種がずらりと並んでいます。
医療事務、営業事務、一般事務、経理事務、秘書、受付といった職種が、どちらの調査でも上位に顔を出しているのが分かります。
ここでも、先ほど残業が多い職種で見たように、両社の平均残業時間には少し開きがありますが、どちらのデータも、「残業が少ない職種にはこんな傾向がある」という視点で見てみてください。
では、なぜこれらの職種は残業が少ない傾向にあるかと言えば、以下のような理由が考えられます。
- 「定型業務」が中心:
事務職の多くは、毎日やることがある程度決まっています。イレギュラーなことが起こりにくく、今日やるべき仕事が明確なので、計画通りに仕事を進めやすい、といことが考えられます。 - 営業時間内で対応が完結しやすい:
受付やカスタマーサポート、そして事務職の中には、会社が開いている時間内にお客様や社内の対応が収まることが多い仕事もあります。時間外に持ち越す必要がない分、自然と残業も少なくなりそうですね。 - 残業を減らす取り組みが進んでいる:
最近はどの会社も「働き方改革」を進めています。特に事務部門などでは、効率化を進めたり、チームで協力して業務を分担したりと、会社全体で残業を減らそうという意識が高いことも、残業時間の少なさにつながっているかもしれません。
もちろん、どんな仕事でも「絶対に定時で帰れる」とは限りませんし、会社や時期によっては、一時的に忙しくなることもあります。
ただ、全体的な傾向として、これらの職種はプライベートの時間を確保しやすいと言えそうです。
女性の残業時間から見えてくる働き方
ここまで男女別のデータと職種別の残業時間について見てきました。
リクルートエージェントとdoda、どちらの調査を見ても、女性の平均残業時間は男性に比べてかなり短い傾向があり、年代が上がっても男性ほど残業時間が増えることは少なく、むしろ緩やかに減っていくような数字に特徴があるようです
職種別のデータでも、残業が「少ない」職種のトップには、医療事務、一般事務、営業事務、秘書といった「事務系」の仕事が多くランクインし、これらを合わせると、いくつかのことが見えてきます。
1. ワークライフバランスは共通の願い?
女性の場合、結婚や出産、育児、介護といったライフイベントを経験する方が多く、その中で仕事と家庭の両立を考える機会も自然と増えます。「残業時間を抑えて、プライベートな時間をしっかり確保したい」という思いは、多くの女性にとって共通のものでしょう。
だからこそ、比較的定時で帰りやすい事務系の職種を選ぶ傾向が見られたり、ワークライフバランスを重視する会社や働き方を選ぶ方が多いのかもしれません。
実際に私も知り合いから、「仕事終わりに習い事をしたり友人と食事に行ったりできる日は、心に余裕が生まれて ”明日も頑張ろう" って思える」、など話を聞くこともあります。
やはり残業が続いてしまうと、どうしても心身ともに疲れてしまいますよね。
2. 企業側のサポートも浸透してきた?
最近では、残業に対する法的制限も強くなってきています。そうしたこともあって企業側も女性が長く働き続けられるように残業を減らす努力をしたり、育児休暇や時短勤務などの制度を整えたりしていますよね。
こうした企業側の努力やサポートが統計の数字にも少しずつ表れてきているのかもしれません。女性を含む社員自身が声を上げたり企業もそれに応える形で、社会全体の働き方が良い方向に変化しているのかも。
3. 残業時間とキャリア、どちらを優先?
一方で、残業時間が短い傾向は必ずしもポジティブな側面ばかりではないでしょう。
例えば残業が多い傾向にある「コンサルタント」や「ITエンジニア」といった職種は、高い専門性を身につけたり大きなプロジェクトを動かすやりがいを感じられたり、その経験が将来のキャリアや収入アップに繋がったりするチャンスも多いものです。
残業時間の少なさばかりを優先すると、そうした成長機会を逃す場合もあり、最終的には「どんな働き方をしたいのか」「どんなキャリアを築きたいのか」という、個人個人の思いを尊重することが大切になりますね。
今回のまとめと今後について
今回見てきた残業時間のデータは、あくまで「平均値」。もしあなたの残業時間がそれらから異なっても、それはあくまで「世の中の傾向」として見てみてください。
大切なのは、「どんな仕事で、どんな働き方をしたいのか」をこうしたデータをチェックするのををきっかけに考えてみること。
- 「今の残業、やっぱり多すぎるな…」と感じたら、今回『残業が少ない』とされた職種や、ワークライフバランスを重視している企業を探してみるのもいいでしょう。
- 「残業はあるけど、今の仕事にはすごくやりがいを感じる!」というのであれば、それはあなたにとって価値のある働き方を選べている証拠かもしれません。
ただ、残業時間から見る視点も重要ですが、AIの発達も影響し、今後は限られた時間の中でどれだけ生産性をあげられるかが益々問われていくでしょう。
これから毎年70万人も人口が減少する、といった、少子高齢化もますます加速し。近い将来国内の労働力不足により、自然と海外からの安価な労働力が職場に現れることが十分考えられます。
その時どうするか?海外からの安価な労働者と時間労働、低賃金で競争するのか、それとも生産性が高く成果の出せる社員として生き残っていくか、どちらの道に進むかは今からの働き方にかかっています。
いずれの道を行くにしても、あがる税金や各種保険料、年金不安のニュースなど見ていると、会社や組織のみに依存して生活していくことは段々とつらい状況になるのは予想されるところです。今後少しでも経済的に安定する方向にもっていくには、会社や組織とは別に新たな収入源を考える必要性も今まで以上に高まって来ているでしょう。
そうした中、私は現在自分の体験を通し、こうした先を見越して何かしなければ、と考えている人向けに無料のメールマガジンを配信しています。
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