
家事や育児を担い、家庭を支えている専業主婦。「その働きを年収にすると1000万円相当」といわれることがありますね。
実際に計算すると、条件によっては1000万円を超えるケースもありますが、それは家事を外部サービスに頼んだ場合の費用であり、専業主婦本人が受け取る年収とは異なります。
では、この数字はどのように計算されているのか、家事を本当に年収として考えられるのか、それぞれ詳しく見ていきます。
専業主婦が年収1000万円といわれる理由
家事を外注した費用で計算している
「専業主婦は年収1000万円」といわれる根拠の多くは、掃除や調理、買い物、育児、子どもの見守りなどを、すべて外部サービスに頼んだ場合の費用です。
たとえばネットでは、家事代行やベビーシッターの料金をもとに、「時給2,000円で1日16時間、365日働くもの」として計算する例も見られます。
時給2,000円 × 16時間/日 × 365日 = 1,168万円
実際計算してみると、
この場合にはたしかに年収1000万円を超えますね。
出典:専業主婦業を年収換算! 1,000万円以上はほんと?| Mama Yell
ただこれは、家庭内の仕事を外部サービスに置き換えた場合の費用を示した試算であり、実際に受け取ることができる年収とは異なります。
家事を金額に換算する場合、
一般的には以下の2つの方法があるようです。

- 1)機会費用法:
家事をしていなければ、本人が外でどれくらい稼げたかを基準にする - 2)代替費用法:
同じ家事を外部の人やサービスに頼んだら、いくらかかるかを基準にする
※)内閣府の経済社会総合研究所(ESRI)による無償労働の試算でも、これらの考え方が用いられています。
1)「機会費用法」の場合で言えば、たとえば、出産前に年収400万円の仕事をしていた人が家庭に入った場合、その収入を「家事や育児に時間を使ったことで得られなくなった金額」の目安として考えます。
ただし、家事そのものに400万円の値段をつけるという意味ではなく、家事や育児に時間を使ったことで得られなくなった収入を、そのまま家庭内労働の金額的な目安にするという方法。
2)「代替費用法」が、ネットで見かける1000万円説の計算法になってます。
高い時給と長時間で1000万円を超える
1000万円を超える計算を少し詳しく見てみましょう。
前提によって数字が変わりますが、
1000万円を超える試算では、高い時給と長い家事時間が大きなポイントになります。
内閣府男女共同参画局の白書によると、
6歳未満の子どもがいる「夫が働き、妻が仕事に就いていない世帯」で、妻が家事・育児・介護に使う時間は「9時間25分」(2016年)。
この時間をベビーシッターに近い時給3,000円で計算すると、年間では約1,031万円になります。
ただ、掃除や買い物、調理など、家庭内の仕事すべてが時給3,000円ということにはなりませんし、実際、家事代行の相場として時給1,500~2,500円を使うと、結果はかなり変わります。
- 時給1,500円:年間 約515万円
- 時給2,500円:年間 約859万円
同じ9時間25分でも、
設定する時給によって金額はかなり変わります。
年収1000万円を超えるには、
それだけ高い時給をすべての家事時間に当てはめる必要があるのも分かります。
公的データでは数百万円台が中心
参考までに、
国の統計をもとにした試算では、1000万円よりかなり低くなっています。
この評価額は、家事や育児などに使った時間を、同年代の女性が働いた場合の平均時給で換算したもの。
この方法で計算した「女性・有配偶・無業(いわゆる専業主婦)」の年間評価額は、1991年時点で「約276万円」、
1996年時点で「約304万円」。
5年間で金額は増えていますし、家事も金額に置き換えると決して小さくないことが分かりますが、それでも1000万円とはかなり差があります。
出典:内閣府 – 無償労働の貨幣評価について、内閣府 – 無償労働の貨幣評価(pdf)
※ 家事に使う時間や、時給・日給に換算した場合の金額については、以下の記事で詳しく紹介しています。

外注費は専業主婦の年収になる?
ここまで見てきたように、
家事は計算方法によって数百万円から1000万円を超える金額に換算できます。
「すごい金額が出た!」と驚いても、その数字がそのまま専業主婦本人の手元に入るわけではありませんし、それが家事の本当の価値を表している、ということでもありません。
では、どのようにこの金額を考えればよいか、という点で整理してみました。
外注費は家事の「年収」そのものではない
計算で使った家事代行やベビーシッターなどの利用料金は、実際には作業する人の時給だけで決まっているわけではありません。
そこには、サービスを運営する会社の管理費や利益、スタッフの採用や教育にかかる費用など、作業以外の金額も含まれています。
また外部サービスとして仕事を引き受ける場合は、次のような条件が求められます。
- 顧客の要望に応える
- 決められた時間や品質を守る
- 内容によっては、経験や資格が求められる
- 問題が起きたときには責任を負う
家庭内の家事と、有料サービスとして提供する仕事では、同じ作業に見えても条件が異なります。
また、家庭で行っている家事と同じ内容に対して「年収1000万円」という場合、それだけの金額を支払ってくれる雇い主のいることが前提になりますが、そうした人が一般的にいるわけでもありません。
これらから、外注費は家事の量や負担を考える目安にはなりますが、そのまま妻本人の年収になると考えるのは難しい、となるでしょう。
家事は、夫婦の役割分担として行われる
「収入」(年収)は、仕事を依頼する相手がいて、その対価として支払われるお金です。
会社員であれば、会社との雇用契約にもとづいて働いて給料を受け取りますし、家事代行であれば、利用者から依頼を受け、料金が支払われます。
一方、専業主婦の家庭では、夫が雇い主となって妻へ家事を依頼しているか、と言えば、そんなことはないですよね。
家庭では、夫が外で働いて現金収入を得て、その間にできない掃除や洗濯、料理、育児などを妻が担う。夫婦で役割を分担しながら運営している、となると思います。
つまり家庭内の家事というものは、
夫婦の役割分担として行われるものであり、給料が発生する雇用関係とは違う、となるでしょう。
夫の給料を「夫だけのもの」と考えると誤解が生まれる
「家事を年収にするといくらか」と考えたくなる背景には、
- 夫には給料があり、それは夫個人の収入として目に見える。
- でも家事には何も支払われない。
- だから家事も金額に換算して、その価値を確かめたい
という感覚があるのかもしれません。
でも実際には、給料の全額を、夫が自由に使えるわけではないですよね。
夫の給料はまず家計に入り、ローンや生活費、貯金を差し引いた残りが、夫婦それぞれの自由に使えるお金になります。手取り30万円の場合を図にすると、次のような流れです。

つまり、夫の口座に給料が振り込まれているからといって、その全額が夫だけの取り分になるわけではなく、多くは夫婦や家族の生活を支えるために使われます。
夫の給料を「夫だけのもの」と見ていると、何やらそこから誤解も生まれます。
家事は何を生み出しているのか
では、家事から「収入」が生まれないのであれば、家事は何を生み出しているのでしょう。
会社で働くと、その成果は「給料」という分かりやすい形になって返ってきますが、家事や育児の成果は、お金という形にはなりません。
- ごはんを作れば家族がお腹を空かすことなく食事ができます。
- 掃除や洗濯をすれば、清潔で暮らしやすい環境が整います。
- 子どもの世話をすれば、その日の生活や成長が支えられます。
つまり、家事が生み出しているのはお金ではなく、家族が毎日暮らせる状態そのもの。
ここが、給料をもらう仕事と家事との大きな違いになりますね。

「給料」が家庭という車を走らせるためのガソリンだとすれば、「家事」は、その車を整え、家族を乗せて、毎日の生活を実際に走らせる役割、と考えると分かりやすそうです。
どれだけガソリンがあっても、食事や着替えが用意されず、家の中も整わず、子どもの世話をする人もいなければ、家庭生活はうまく回りません。
逆に、どれだけ家事をしても、家賃や食費を支払う現金収入がなければ生活は続けられません。
外からお金を得る役割と、暮らしをつくる役割。
その両方があって、家庭は成り立ってるんですね。
専業主婦の価値は、どう見ればいい?
では結局、専業主婦の家事の価値は、どのように考えればよいのでしょうか。
上の方で見た機会費用法や外注費で金額を出しても、そのお金が妻本人の収入として入るわけではありません。
家事を通じて家庭に返ってくるのは、外注しなくて済んだことによる「支出の削減」であり、また、食事が用意され、家の中が整い、子どもの生活が支えられ、家族が日々を送れる、といった「その家庭の暮らしの土台そのもの」。
家事の成果は妻個人に返ってくるものではなく、
「家族全体が受け取っているもの」と考えられます。
それでも、より具体的にその評価をしたい、という場合には、以下を想像してみるのも1つの手。
- もしその人が家事をしなくなったら、食事や洗濯、掃除、子どもの世話を誰が担うのか
- その場合、家族にどれだけの負担が増え、どの部分が回らなくなるのか
家事の価値は、その人が家庭の中で実際に何を担い、どのような暮らしをつくっているのかによって変わるものだと思います。
外注費などで計算するのは、可視化するための1つの方法ですが、その数字が専業主婦本人の年収になるわけでも、家事の価値をすべて表すわけでもありません。
「いくらになるか」を計算することには意味がありそうですが、そこで出た金額を答えそのものと見るのではなく、家事をどの基準で測った数字なのかまで含めて読む必要がある、ということになるのでしょう。
まとめ
- 家事の金額換算には、外で働けば得られた収入で見る「機会費用法」と、外注費で見る「代替費用法」がある
- 「年収1000万円」は、主に家事を外部サービスへ頼んだ場合の費用をもとにした試算
- 高い時給、長い家事時間では1000万円を超えるが、公的データでは数百万円台の例が多い
- 家庭内の家事は雇用による仕事ではなく、夫婦の役割分担として行われている
- 家事が生み出すのは給料ではなく、家族が毎日暮らせる状態そのもの
専業主婦の家事は、条件によって年収1000万円など高額に換算できますが、その数字をそのまま本人の年収と考えることはできません。
家事を金額に換算するのは、普段は見えにくい量や負担を考えやすくなる、というメリットがありますが、金額だけを切り取るのではなく、どの基準で計算した数字なのかまで見ると、受け止め方も変わってきますね。
今後を考える
家事は金額に換算できますが、
その数字が専業主婦本人の収入になるわけではありません。
家族の暮らしを支えることと、自分名義の収入を持つことは別の話ですし、将来のお金や働き方が気になるなら、会社員やパートだけでなく、ほかの選択肢も考えてみてもよいと思います。
私は現在、会社やパート以外の形で収入をつくりたい方に向けて、無料のメールマガジンを配信しています。
詳しい内容は、以下からご覧ください。


コメント